最終更新日

この記事の概要
- 労働基準法改正の議論と自社物流への影響:勤務間インターバル制度や連続勤務規制、法定休日管理などに関する見直しの議論が進められています。制度内容によっては、自社物流を運営する企業において、人材確保やシフト運営、労務管理の負担が増加する可能性があります。
- 物流部門が経営課題化する背景:物流人材の採用難や人件費の上昇が続く中、自社物流の維持には多くの経営資源が必要になっています。さらに、労働規制への対応負担が増加した場合、人材不足や管理負担は物流コストの上昇や出荷能力の低下、事業継続リスクにつながる可能性があります。そのため、物流部門を単なる現場機能ではなく、経営課題として捉える重要性が高まっています。
- 物流委託・3PL活用という選択肢:物流委託や3PLを活用することで、人材確保や労務管理、法令対応に関する負担の軽減が期待できます。また、物流運営リスクの分散や経営資源の最適配分にもつながります。物流アウトソーシングは単なるコスト削減策ではなく、持続可能な物流体制の構築と本業への集中を実現するための経営戦略として注目されています。
2024年問題への対応が進む中、自社物流を運営する企業では、物流現場の安定運営が求められる一方で、物流人材の採用難や人件費の上昇が続いており、多くの企業が物流体制の見直しを迫られています。
そのような状況の中、政府では約40年ぶりとなる労働基準法の見直しが検討されており、今後は「人手不足でも労働者の休息を確保する」という流れがさらに強まる可能性があります。
こうした環境変化の中で注目されているのが、自社物流のあり方です。これまで自社物流は品質管理や業務コントロールの観点から有効な選択肢と考えられてきました。しかし現在は、人材確保や労務管理、法令対応そのものが経営リスクとなりつつあります。
本記事では、労働基準法改正の議論を踏まえながら、自社物流に想定される影響と、物流委託・3PL活用が有力な選択肢として注目される理由について解説します。
労働基準法改正の流れと物流業界の現状
労働基準法改正の議論が進む背景
厚生労働省の労働基準関係法制研究会では、働き方の多様化や人手不足への対応、労働者の健康確保などを背景に、約40年ぶりとなる労働基準関係法制の見直し議論が進められています。
2025年1月に公表された「労働基準関係法制研究会報告書」では、働き方の多様化や人手不足、労働者の健康確保などを背景に、労働時間管理や休日管理の見直しが提言されています。
2026年時点では法案提出・施行時期ともに確定していませんが、報告書で示された論点については引き続き議論が続いています。
自社物流を運営する荷主企業にとっては、制度内容によって人材確保や労務管理の負担が増加する可能性があります。
自社物流に影響する主な見直し論点
勤務間インターバル制度の義務化
勤務間インターバル制度とは、終業から翌日の始業まで一定時間の休息を確保する制度です。現在は努力義務ですが、研究会報告書では義務化も視野に入れた法規制の強化について検討の方向性が示されています。物流センターにおいて夜間勤務や早朝勤務を組み合わせたシフト運用を行っている場合、制度内容によっては追加人員の確保や人員配置の見直しが必要になる可能性があります。
13日超の連続勤務禁止
現行制度では変形休日制の活用によって長期間の連続勤務が可能となるケースがありますが、研究会報告書では「13日を超える連続勤務の禁止」が提言されています。物流現場では繁忙期に業務が集中することがあるため、制度化された場合には計画的な休日取得や代替要員の確保が求められる可能性があります。
法定休日の特定義務
研究会報告書では、法定休日の事前特定に関する制度見直しの方向性が示されています。シフト勤務や365日稼働の物流センターでは、休日管理やシフト設計の見直しが必要になる可能性があります。
労働時間情報の開示拡大
人的資本経営への関心の高まりを背景に、労働時間情報の把握や情報開示のあり方についても議論されています。物流部門の労働環境が可視化されることで、採用競争力や企業イメージへ影響する可能性があります。
これらの見直しは労働者保護の観点から重要な取り組みです。一方で、自社物流を運営する荷主企業にとっては、人材確保や労務管理、法令対応の負担増加につながる可能性があります。こうした変化を踏まえると、物流部門は単なる現場機能ではなく、経営課題として捉える必要性が高まっているといえるでしょう。
物流部門の経営課題化と自社物流運営リスク
物流人材確保の限界
自社物流を運営する企業では、物流センターの作業員や現場管理者など、物流業務を担う人材を継続的に確保する必要があります。
しかし近年は労働人口の減少や採用競争の激化により、必要な人員を安定的に確保することが難しくなっています。特に荷主企業では、営業職や開発職と比べて物流職種の採用優先度が下がりやすく、十分な採用体制を構築できていないケースも少なくありません。
さらに勤務間インターバル制度や連続勤務規制などが今後導入された場合、これまでと同じ物流体制を維持するために追加人員が必要になる可能性があります。人材不足への対応と労働者保護の両立が求められる中、物流人材の確保はこれまで以上に重要な経営課題となっており、人員不足が長期化した場合には物流品質や出荷体制の維持にも影響を及ぼす可能性があります。
労務管理負担の増大
物流センターは早朝勤務や夜間勤務、土日稼働、繁閑差への対応など勤務体系が複雑になりやすく、もともと労務管理負担が大きい現場です。
加えて、労働基準法の見直しによって新たな対応が求められる可能性があります。
- 勤務間インターバルへの対応
- 連続勤務日数の管理
- 法定休日の明確化
- 労働時間情報の把握と管理
制度対応の増加により、物流責任者や管理職が本来注力すべき業務改善や生産性向上活動に十分なリソースを割けなくなることも懸念されます。
人件費・物流コストの上昇
自社物流の運営には人件費や採用費、教育費、システム運用費、設備維持費などの継続的なコストが発生します。
近年は賃金上昇や採用コストの高騰が続いており、物流部門の運営コストは年々増加しています。さらに労働時間規制への対応によって追加人員の確保が必要になれば、人件費のさらなる増加も想定されます。
これまで残業や休日出勤によって吸収していた業務についても、今後は適正な人員配置を前提とした運営が求められるため、自社物流の維持コストはより大きな経営負担となる可能性があります。
出荷能力低下と事業継続リスク
物流は売上や顧客満足度を支える重要な機能です。
しかし、人材不足や労務管理上の制約によって十分な人員を確保できなくなった場合、出荷能力そのものが低下する可能性があります。
特に年末商戦や大型セール、新商品発売などの繁忙期では影響が顕在化しやすく、出荷遅延や欠品、配送品質の低下につながることも考えられます。
自社物流では、物流部門の課題が売上や顧客体験へ直接影響します。そのため現在は、「物流をどう運営するか」だけでなく、「物流機能を持続的に維持できるか」が重要な経営テーマとなっています。
【関連記事】物流の人手不足の原因とは?業務効率化を実現する対策まで解説!
物流委託・3PL活用による課題解決
物流人材不足や物流コストの上昇に加え、労働基準法見直しの議論によって、今後は労務管理や法令対応への負担が高まる可能性があります。
こうした環境変化の中で注目されているのが、物流委託や3PL活用です。近年では物流を自社で抱え込むのではなく、「物流業務は専門事業者へ委託し、自社は物流企画や本業へ集中する」という考え方が広がっています。
物流委託や3PL活用は単なる外注化ではありません。人材確保や労務管理、法令対応などの運営リスクを軽減しながら、企業競争力を維持・強化するための経営戦略として注目されています。
人材確保リスクの低減
物流委託を活用することで、現場人材の採用や配置、教育に関する負担を軽減できます。物流事業者が持つ採用基盤や運営ノウハウを活用することで、自社で物流人材の確保に多くのリソースを割かなくても、安定した物流運営を実現しやすくなります。
また、今後の労働時間規制の強化によって必要人員が増加した場合でも、自社単独で対応する負担を抑えやすい点もメリットです。
労務管理・法令対応負担の軽減
勤務間インターバル制度や連続勤務規制、法定休日管理などは、今後の制度見直しにおける論点として示されています。制度内容によっては、物流センター運営や労務管理への影響が想定されます。
物流委託を活用することで、荷主企業は物流現場の人員管理やシフト運営、法令対応に関する負担を軽減しやすくなります。自社で物流人員の配置や勤怠管理、制度対応を行う必要性が低減されるため、労務管理にかかる工数や人的負担の削減も期待できます。
その結果、荷主企業は物流現場の管理業務に追われることなく、物流品質の向上やサービスレベルの維持・改善に注力しやすくなります。
経営資源の最適配分
自社物流を維持するためには、人材採用や教育、設備維持、システム運用など、多くの人的・金銭的リソースが必要です。
一方で、企業が本来注力すべき領域は、商品開発や販売戦略、SCM戦略、物流企画といった競争優位性の源泉となる業務です。
物流委託によって現場運営負担を軽減できれば、荷主企業は物流現場の管理業務ではなく、物流品質やKPI管理、物流戦略の立案・改善といった付加価値の高い業務に注力しやすくなります。限られた経営資源を企業価値向上につながる領域へ集中できることは大きなメリットです。
法改正リスクへの対応力向上
労働基準法をはじめ、物流業界を取り巻く法制度は今後も見直しが続く可能性があります。
自社物流の場合、制度変更のたびにシフト設計や運営ルール、労務管理体制の見直しが必要になります。しかし物流事業者は、法令対応を物流運営の一部として継続的に行っており、制度変更への対応ノウハウを蓄積しています。
物流委託を活用することで、自社単独で制度対応を進める負担を軽減しながら、変化する事業環境へ柔軟に対応しやすくなります。
今後の法改正や人材不足の長期化を見据えると、物流委託は単なるコスト削減策ではありません。物流運営リスクへの備えや持続可能な物流体制の構築を実現するための経営戦略として、その重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
【関連記事】3PL導入の最適タイミングを企業規模別・課題別に徹底解説!
自社物流と物流委託・3PLに関するFAQ
Q1.労働基準法改正の議論は自社物流にどのような影響がありますか?
A1.制度内容によっては、自社物流における人材確保やシフト運営、労務管理の負担が増加する可能性があります。
勤務間インターバル制度や連続勤務規制などが制度化された場合、人員配置や勤務計画の見直しが必要となる可能性があります。
Q2.自社物流と3PL(物流委託)の違いは何ですか?
A2. 自社物流は荷主企業が物流業務を自ら運営する形態であり、3PLは物流業務の全部または一部を専門事業者へ委託する形態です。
自社物流には運営をコントロールしやすいメリットがあります。一方で3PLには、人材確保や労務管理の負担軽減、物流ノウハウの活用といったメリットがあります。Q3.どのような企業が物流委託・3PL導入を検討すべきですか?
A3.物流人材の確保や労務管理、人件費の上昇に課題を抱えている企業は、物流委託・3PL導入を検討する価値があります。
特に、物流人材の採用に苦戦している企業や、物流責任者の管理負担が大きい企業、繁忙期の出荷体制に不安がある企業に適しています。物流委託は単なるコスト削減策ではなく、物流運営リスクを軽減しながら持続可能な物流体制の構築を目指す選択肢の一つです。
まとめ
労働基準法の見直しでは、勤務間インターバル制度や連続勤務規制などが議論されており、制度内容によっては自社物流を運営する企業において、人材確保やシフト運営、労務管理の負担が増加する可能性があります。
また、物流人材の採用難や人件費の上昇が続く中、自社物流の維持はこれまで以上に経営課題となっています。人材不足や管理負担の増加は、物流コストの上昇や出荷能力の低下につながる可能性もあります。
こうした環境変化への対応策の一つとして、物流委託や3PL活用が注目されています。物流アウトソーシングは単なる外注化ではなく、人材確保や労務管理に関する負担を軽減しながら、経営資源を本業や物流戦略へ集中させるための有効な選択肢です。
なお、本記事で紹介した内容は、2025年1月に公表された「労働基準関係法制研究会報告書」で示された提言に基づくものであり、2026年時点では法案提出や施行時期は確定していません。今後の制度設計や法案化の過程で内容が修正される可能性もあります。
今後の制度動向も見据えながら、自社物流のあり方や物流体制の最適化について検討することが重要といえるでしょう。
【参考資料・出典】
・厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001370269.pdf
物流人材不足や法改正リスクに備えるため、まずはお気軽にご相談ください
「自社物流をこのまま続けるべきか判断できない」
「物流人材の確保や労務管理の負担が今後どこまで増えるのか不安がある」
もし、このような物流体制の見直しや物流委託に関する疑問やお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、弊社の無料オンライン相談をご利用ください。
当社の物流コンサルタントが、貴社の物流実態を丁寧にヒアリングした上で、自社物流の継続・委託化を含めた最適な物流体制の方向性を個別にご提案いたします。
もちろん、情報収集や市場動向に関するご相談だけでも大歓迎です。
「まずは話を聞いてみたい」という方も以下のバナーよりお気軽にお申し込みください。
